サッカーの試合で見られるプレーは一つの現象です。その現象には多くの状況と原則に伴う必然的な判断などが含まれています。プレーという現象は人によっても変わってきます。何かミスが発生した時にその原因を分析するために一定のモノサシが必要になってきます。そのモノサシは時代によって変化するもの、人によって変わってしまうもの、ではなく普遍的なものであることが重要です。また、捉え方はいろいろあるので、何を考えていたのか?本人に発問する必要もあります。
指導者にとって最も重要な力は「分析力」です。分析が出来なければ本当の原因に辿り着くことができず、プレーの改善を行うことができません。そのためには分野に捉われず広く深い知識が求められます。そして育成世代で起こる現象の原因はサッカーの範囲だけの話ではありません。
火曜日の活動は、ほとんど学校の休み時間のような時間です。そこには学年が異なり、考え方が異なり、性別が異なり、など多くの異なる点が交わります。何か揉め事が起きたり、泣く子が出たり、となかなかのカオスが発生することもあります。
しかし、これはとても大切な体験です。いろいろな考えを持つ子とコミュニケーションを取り一緒に遊びます。気の合う仲間だけでコミュニティーを作るのではなくいろいろな考え方、個性が混ざることも重要です。
サッカーも同じですね!ピッチに入って試合が始まったらいろいろな課題が発生します。そこでは選手たちだけでどうにかするしかありません。それぞれが考えを持ちチームメイトとコミュニケーションを取りながら修正し闘います。外からの指示で動くのではなく、自分で考え行動できる自立し主体的な選手達です。
高校生が選手権などで失点後にミーティングを行う姿がよく映りますが、これは小学生でもできると思います。遊びの中で「次何して遊ぶ?」とミーティングをしているわけですから同じことです。簡単な話、サッカーの試合では何をテーマに話し合うのかを理解できていないだけです。そうなると誰がサッカーをしているのか?という課題が見えてきます。
これが出来ないのは大人が干渉し過ぎているからではないでしょうか?目の前では小学1年生が自分の意見を主張し交渉する姿があります。遊びの中にはこのような成長機会がたくさんあります。
これが自立し主体的な選手をつくるtierraのトレーニングです。
別の課題として、なぜ運動能力が低いのか?というものがあります。それは体の使い方が上手くないからです。少しカラクリのある貯金箱を作ったとして想像通りの動きにならなかったとします。なぜ、上手く動かないのか?それは構造が上手く行ってないからです。運動も同じで動かし方の問題です。
例えば、サッカーという括りで考えるとドリブルは基礎であり原因に当たるかもしれません。しかし運動という括りから見るとドリブルは現象と捉えることが出来ます。ドリブルもサッカーより外側に原因が存在してきます。サッカーのプレーの原因はサッカーの中にあると捉えがちですがそんなことはありません。あくまで運動なのでそれ以前の問題もあります。
サッカーのテクニックではドリブル、パス、トラップなど基本的テクニックがあります。これらをめちゃくちゃトレーニングするイメージがあると思いますが、運動能力が高ければ初めからある程度出来ちゃいます。となると、めちゃくちゃトレーニングする前に運動能力を上げちゃった方が効率よく上手くなるということに気付くと思います。しかも、運動能力の違いでドリブルも違うものになってしまうので特にボールタッチだけ続けていれば自動的に上手くなっていくと思います。運動能力の向上、判断材料の増加、判断スピードの向上でテクニックは変化していきます。だからテクニックは人に習うものではなく自分で高めるものだと思います。教えてあげられるのは原因のところ、運動として効率が良いのか?というジャッジです。
また、サッカーではしばし、周りを見ろ!速く寄せろ!切り替えろ!などなど指示が飛びます。なぜ出来ないのか、これはサッカーの中に原因があるわけではないです。
これらのことは、鬼ごっこやドッジボールなどで遊んでいれば必然的に身につきます。出来ないのはその経験が少ないく感覚がないからです。ではなぜ経験がないのか?それは例えば習い事などに時間を投資し過ぎていて遊ぶ時間に投資ができていないからだと思います。
そして習い事の多くは現象にアプローチしたものになっていると思います。現象は誰でも見ることができるので分かりやすく無限に存在します。ここに時間が無くなる原因があります。
こう見てみると子供ができない原因は、大人が関わり過ぎている、教えすぎている、と言えるのかもしれません。子供達を信頼し自由な時間を作ってあげれば子供達は自分で足りないところを補い成長していきます。
しかし、今は昔と違い遊ぶ場がなかったり、安全性に課題があったりします。そんなこともあり火曜日にはこの機会を作っています。大人にとっては教えてもらう機会ではないので価値を見出せないかもしれません。しかし、原因を改善する、という視点で見るとこの方が遥かに効果があり、価値があります。子供が伸びるために本当に必要なことは何か?原因を分析する力が求められます。
またコミュニケーション能力はその時期にあったコミュニティーで形成することができると思います。だから子供は子供のコミュニティーでそれを学ぶ必要があります。大人に教えてもらうことだけでなく、子供自身の成長を促す場も必要です。子育ての本などにもよく載っている「大人はヘルプではなくサポートをする」これはとても大切な言葉です。
子供達を成長させるために指導者が目を向けるのは現象ではなく原因です。現象=プレーは自由です!