サッカーの指導者だからサッカーについて詳しくなるのは当然です。しかし、サッカーは一つのスポーツの形です。サッカーの周りにはもっと大きく重要な要素がたくさんあります。これは選手である前に人であるわけですから当然のことです。サッカーはほんの一部です。
だから、サッカーを子供たちに教えるためには、とても多くの知識がなければ困難です。年代が低ければ低いほど育成の難易度が上がります。子供達にはサッカーだけ教えてあげても不十分です。子供達は発育、発達段階であり、いろいろな知識を学ひ身につける段階です。学校の教員、保護者、地域の方、サッカーの指導者、その他習い事の指導者、と多くの大人が関わりながら育っていくことになります。
ゴルフと同じで少しでも角度が違えばOBに飛んでいきます。小さな子供に対する育成は本当に繊細です。指導者がサッカーが上手い、上手かった、だけでは良し悪しを図ることができません。
サッカーも大きく括れば単なる現象です。その現象の原因となる、運動能力が優れている、頭が良い、身体能力が長けている、こっちの方が重要です。まず取り組むべきはドリブルやパスではないことがわかると思います。
子供はテクニックだけでは育たないのです。
それではテクニックとはどんなものでしょう?ここでは「経験に基づき生まれた効率の良い作業」と定義します。これは反復することで質をあげることができます。言い換えると「作業の経験量により質が上がるもの」それがテクニックと言えます。
気をつけたいのは、なぜそのテクニックが必要なのか?なぜ生まれたのか?がテクニックからでは経験できないことです。ここで得られるのは「反復すると作業の質が良くなる」という経験です。
テクニックから生まれる現象は結果として、物、事、に置き換えることが出来ます。人はそれをお金を使って買うことができます。これが、商品、製品、サービスです。買っているのは、物、事、という結果でありそれを買ってもその人がその物や事を作り出すことは出来ません。あくまでお金を払って買った、物、事を所有できるだけです。
だから、簡単に自分の価値を上げる方法はハイブランドを身につけることになります。しかし、価値を理解して身につけている人とそれを装うためにお金を使った人とでは根本が異なります。
余談として、経営者はお金の使い方が違います。テクニックにはお金を使わず、それを作り出す知識や経験にお金を使います。それを自己投資と言います。経営者のイメージとして、よく釣りやゴルフをしていると思います。例えばそこで得られた知識を基にテクニックが生み出され、物、事、に変換しお金を作ります。知識と経験は消耗して無くなることはないので無限に物や事を生み出すことが出来ます。知識と経験を得られる場が経営者には必要です。そこに作業が必要になれば人を雇って人にやってもらいます。
tierraでは子供達にこれを経験してもらっています。得るのは知識と経験です。テクニックはそこから生まれ出る物なので人から買う物ではなく自分で作るものです。
さて、話を戻します。スーパーなどで野菜を購入することがあると思います。茄子も買ったことがあると思います。茄子という食べ物にお金を払ってそれを所有することは茄子の価値以上のお金を持ってさえいれば誰にでもできます。では、茄子を買って茄子を作ることができますか?ここが重要です。
茄子を買っても茄子を作り出すことは出来ないと思います。なぜなら、この茄子は結果であり現象の一つに過ぎないからです。
茄子を育てるためには、それなりの経験と計画が必要になります。売る、という目的で多くの量を摂りたいのであれば肥料を増やす必要があります。利益を生み出すためには取れる量と肥料の価格のバランスを見る必要があります。肥料は意外と高いので。
風も重要です。風により茄子が揺れれば傷つき売り物になりません。自分で食べるのであれば傷があってもいいと思いますが、ご近所に配るならやっぱり見た目も重要ですね。
それ以前の話として、種を買って苗を作るのか、苗を買うのか、どのような土が向いているのか、根はどのように張るのか、畑の準備をいつするのか、芽掻き、雑草退治、害虫対策、などなどかなり多くの知識が求められ都度分析し対策する必要が出てきます。その結果、どのようにやれば効率が良いのかを作業に置き換えていくわけです。毎年やれば質が上がり作業に置き換わっていきます。
この結果を一袋200円で購入することが出来ます。200円でこのような経験まで買うことが出来ますか?これは不可能です。
これが私が考える育成です。だから育成を商売にすることはナンセンスだと思います。無いものは売れません。
経験は簡単にお金で買うことはできません。時間を掛けて子供自身に体験してもらうことが最も近道です。ほとんどの場合、効率を買っていると思います。そうなると奇跡的に条件が揃って自生した、たまたま美味い茄子が評価されることになります。育てた、というより育った、という感じです。
現象と原因、ウサギとカメの競争、急がば回れ、彼を知り己を知って百戦危うからず、
サッカーの指導者講習でも、どこまでオープンにするのか、ガイデットディスカバリー、目の前の子供に合わせる、基礎の重要性、子供は小さな大人ではない、
日常でも、ナンバーワンではなくオンリーワン、
などなど関連する言葉はあちこちに置かれています。問題はその本質に気がつくかどうか、です。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ (オットー•フォン•ビスマルク)」
保護者の方に茄子を作ってもらうのも面白そうですね。目的を決めてもらってそうなるように茄子を作ってもらいます。茄子は子供であり、これは子育てそのものです。自分の子供で失敗はできませんが茄子なら失敗しても問題ありません。
視点を変えればもっと人生を楽しめる!と思うので私は育成に取り組んでいます。