指導者にとっての武器はトレーニング計画とコーチングスキルです。それを支えるのは、分析力と知識と体験量です。
トレーニングの計画も結構難しいです。しっかりと見えてくればそんなに難しくはありませんが、見る範囲や知識、体験が足りないと全く話にならないと思います。私もそうでした。
簡単に説明すると、サッカーには多くの現象が現れます。その現象の中で再現性のある現象を見つけ、その原因を分析します。現象は他の現象にまたがることもあります。しかし、原因は同じだったりします。
例えば、A君はお腹が痛くなりました。B君は咳をするようになってしまいました。この2人の現象は異なりますが、行動を観察すると原因は「手洗いうがい」をしなかったこと、と分析することが出来たとします。現象を指摘してその原因を伝えれば、次からは原因を潰すことができます。現象には「手洗いうがい」をしなかった、という失敗があります。失敗もとても大切な要素です。
こんな感じで、原因を分析します。その原因を解決するためのヒントをウォームアップで取り組んでもらいます。これは「手洗いうがい」を実際に体験することです。
次に、そこに誘惑を持ってきます。「手洗いうがい」の前にドーナツでもあげてみましょうか?だべちゃったら同じ現象が生まれますね。本当に食べて良いのか聞いてみましょう。サッカーでは「相手」ですね。
そしたら、色々な誘惑を増やしていきます。ゲームをやる?テレビ見る?何か食べる?というように実際の生活にあるような誘惑を出していきます。サッカーも同じでゲームに近づけていきます。
そしたら、普通の生活を見守ります。さて「手洗いうがい」は出来ますか?サッカーはゲームで観察します。少し異なる点はありますが、こんな感じでトレーニングは計画されていきます。
サッカーのトレーニングでは、テーマがあってそれを構成するキーファクターがあります。そしてさらに「指導者が何を落とし込みたいのか」というものがあります。裏テーマ的なものですかね。これを選手に獲得させます。要するに指導者が何かを求めることで、その概念から選手が何かを生み出せれば良いわけです。そうすると、選手は自分で裏テーマを獲得します。そこは、シンクロコーチングで「グッド」や「ブラボー」という感じで評価していきます。
これは原因の原因という位置付けになるでしょうか。現象には原因がありますが、その原因にも原因はあります。この最も深くにある原因は何かの干渉を受けないと漠然としてしまうため、現象との結びつきが弱くなります。そのためトレーニングではイメージしやすい原因をチョイスします。
「何を獲得させたいのか?」これをトレーニングに落とし込むのは結構難しいですね。私も時間が掛かりました。
さてさて、そんなトレーニングの中で「フリーズコーチング」というテクニックを使います。これはプレーを止めますのでゲーム性が低い段階が使いやすいです。ゲームでほ使わないですね。
今回私はトレーニング1でフリーズを掛けています。そのシーンはTwitterに上がっていますが、少し文字でも起こしておきます。
1.対象となる現象を見つけたらプレーを止めます。
今回のプレーは「オンへプレスがない、且つ守備が2ラインを形成しつつある、形成しているシーン」です。守備が1ラインになっている、もしくは複数人がプレスに動くシーンは守備側のミスなのでスルーします。
2.プレーを再現します。
配置を元に戻しながらそのシーンを確認していきます。
3.発問します。
なぜそのようなプレーになったのか、聞いてみます。漠然と「どうしてそうしたの?」と聞く時もありますが返答が難しいシーンもあります。それは論理的な理由がなく「◯◯したい!」というような感覚的に判断したような時です。今回のシーンもフェイクでいけるだろう、というような感じに見えたのでそのように発問しています。発問の内容は選手の表情を観察して変えていきます。
4.ちょっとヒントを出してみます。
今回は一つ前のトレーニングをぶつけてみました。どんなことをやったのか?それは使えそうか?という感じです。
5.オプションを提示します。
ここはデモンストレーションに当たると思います。こんなこともできるよね?という提案です。
6.基準を示します。
どのようなシーンで何をするのか?という現象に対する基準を明確にしていきます。今回は「オンへプレスがあるのか?」という判断基準と「プレスがない場合にどこのスペースを誰が使うことが出来るのか?」という行動の基準を確認しました。これは「判断と行動」要はプレーのことを指します。
7.あくまで提案ということ。
最後にこんな時はこんなことを考えても良いのでは?という提案に留めます。プレーするのは本人です。その後は現象に対してシンクロコーチングでジャッジをしていきます。
こんな形で、トレーニングをやっていきます。トレーニングでは、この現象に対して必要となることを落とし込んでいきます。そうすると選手たちは、そのプレーの前後あるプレーなどを発明し自分の力で獲得していきます。今回はプレーとして「パス&ムーブ」が生まれていきました。生まれるプレー自体は選手によっても違うかもしれません。
「何を落とし込むのか」今回私が考えていたのは「スペースの使い方」ですね。スペースの使い方単体は教えることが困難です。なぜなら、相手によって現象が異なるからです。スペースの使い方として「パス&ムーブ」は有効です。
今回のテーマは「解放」です。ウォームアップではクサビや角度を変えるコントロールを体験してもらい、トレ1ではプレスの有無を確認しフィックスしました。その後、そのフィックスしたものを使いゲーム性を持たせると連続性が生まれます。パスは出して終わりではないので、そこでは「パス&ムーブ」が必然的に生まれます。あとは、ゲームで「解放」が起こるのか?を観察していきます。この現象(オンへのプレスがない)が起こるシーンは、ゴールキック、スローイン、ということになります。
身につけることは「スペースを上手に使うこと」です。